てのひら訪問看護リハビリステーション

てのひら訪問看護リハビリステーションは
高知市を中心にサービスを行っております

最期に頂いた「ありがとう」のメッセージ

仕事上、終末期を迎えるご利用者様のお宅に同行する機会があります。
今年七月に老衰のため九二歳で永眠されたM様は、長年、ご自宅で長男様ご夫婦の献身的な介護を受けておられました。

初めてのお顔合せは、昨年の訪問開始時に、スタッフとお宅を訪れた時のことでした。
その日の体調をスタッフさんと共有するため、ご家族の了解を得てM様の状態をビデオ撮影させて頂きました。 その際に M様は、カメラに向かって「私は昔浜っ子やったき。毎日海で遊んで真っ黒けやったきね。浜っ子は足腰が強いきね。元気になって故郷の海に行ってみたいねぇ」と、爽やかな笑顔で話されていました。

今年の春頃から段々と体調が衰え、五月からは水分摂取以外食事ができない状態が続きました。ご家族は、お母様が天寿を全うされることを望まれていました。余命数週間と言われながらも、1か月半が経った七月中旬、緊急コールがあり、私も同行させて頂きました。声かけに若干のうなずきがあるものの、呼吸も浅くバイタルの測定も不可能な状態で、最期が近づいていると状態だと看護師がご家族に伝えました。

私が携帯に録画していた一年前の動画をご家族にお見せしている時でした。
M様が閉眼したまま右手を上げ、まるで敬礼のようなポーズをされました。ご家族に訊ねると、感謝を表す時のポーズだそうです。残された力で、まわりに気配りをされるように意思表示されるM様の動きに驚き、感動しました。

看護師が、息子さんとお嫁さんに、今後の呼吸の変化を伝え、そばにいて手を握り、肩をトントンと叩き呼吸合わせをすると本人も安心すること、呼吸が止まった時は息子さんにしっかり母親を抱きしめることを伝え、M様宅を離れました。

一時間後、息子さんより、「母が亡くなりました」と静かな声で電話ありました。
息子さんはお嫁さんと一緒にお母様をしっかりと抱きしめ、看取られたそうです。息子さんも肩を震わせて泣いておられたそうですが、母親の介護と看取りをやり切った安堵感を感じているようでもあったそうです。そして、M様は、家族のあたたかな声に包まれて、おだやかに旅立たれたそうです。

M様の最後の「ありがとう」の振舞いは、きっと、長年一緒に暮らし最期までしっかりと看取られた長男様ご夫婦に対する感謝の気持ちとと同時に、普段から感謝に満ちたM様の人生のお姿だったように思えます。

令和3年 7月日

てのひら訪問看護リハビリステーション  マネージャー 朴